ChatGPTは法律相談相手として使える?弁護士が解説する「賢い使い方」と「限界」

こんにちは、京都市中京区の「こうの法律事務所」です。

「AIに強い弁護士」を目指し、AIを活用しながら法的トラブルの予防・解決に取り組んでいます。

ChatGPT(チャットジーピーティー)やGemini(ジェミニ)など、目覚ましい進化を遂げている生成AI。

その知識の豊富さや会話の自然さに、驚いている方も多いのではないでしょうか。

何年も前から、「法律で分からないことがあれば、ググる(Google検索する)」ということが当たり前になっています。

そして今後は、AIに聞くということが当たり前になっていくはずです。

そこでこの記事では、法律の専門家である弁護士の視点から、「法律問題においてChatGPTはどこまで使えるのか」ということを、分かりやすく解説します。

Contents

ChatGPTが得意なこと:法律知識の「壁打ち」相手として

まず、ChatGPTが法律分野で役立つ側面を見ていきましょう。

  • 「誰が相続できる?」「クーリングオフについて教えて」といった、一般的な法律知識や制度の概要を調べる上では有益です。
  • 複雑な法律用語や制度を、簡単な言葉で解説することもAIは得意です。
  • 契約書や内容証明郵便などの雛形(たたき台)を作成させることは可能です。
    ただあくまでも「たたき台」なので、そのまま使うのはリスクが伴います。
  • 自分が抱えている問題について、考えられる法律上の論点を洗い出させるといった使い方も有益です。

このように、ChatGPTは法律に関する一般的な情報提供や、思考整理の「壁打ち」相手としては、非常に便利な存在です。

ChatGPTの限界と危険性:なぜ法律相談の「代替」になれないのか

一方で、ChatGPTの回答を鵜呑みにして、実際の法的判断を下すことは極めて危険です。

その理由は、ChatGPTが持つ根本的な限界にあります。

個別具体的な事案への対応能力の欠如

法律相談の最も重要な点は、一人ひとりの「個別具体的な事実関係」を詳細に分析し、法的にどういう選択肢があるか、どうすべきか考えることです。

いつ、どこで、誰が、何をしたのか。そうした細かな事情が少し違うだけで、法的な結論が180度変わることも珍しくありません。

その点ChatGPTは、一般的な知識は提示できても、あなたの置かれた個別具体的な状況を理解し、適切な判断を下すことはできません。

情報の正確性の保証がない

ChatGPTが学習しているデータは、必ずしも最新かつ正確であるとは限りません。

法改正に対応できていなかったり、インターネット上の誤った情報を学習している可能性もあります。

さらに、もっともらしい嘘の判例や条文を生成する「ハルシネーション」という現象も報告されており、その情報を基に行動することは大きなリスクを伴います。

守秘義務とプライバシーの問題

法律相談には、他人に知られたくない極めてプライベートな情報も含まれます。

ChatGPTに入力した情報が、AIの学習データとして利用され、意図せず外部に漏洩する可能性は否定できません。

一方、弁護士には厳格な守秘義務が課せられており、相談内容の秘密が守られます。

結論:ChatGPTは「調べものツール」、相談は「人間の弁護士」へ

何かトラブルに巻き込まれたり、分からないことがあった場合、いきなり弁護士に相談するのはハードルが高いです。

そこで、まずChatGPTに聞いてみるというのは良い使い方です。

しかし、それはあくまで「入口」に過ぎません。

あなたの人生を左右するかもしれない問題に直面したとき、必要なのは一般的な知識ではなく、あなたの状況に寄り添い、専門家としての知見と経験に基づいて最善の解決策を共に考えてくれる「生身の弁護士」です。

ですからChatGPTで得た知識は、あくまで参考情報や、弁護士に相談するための事前準備と捉えましょう。

そして、具体的な悩みを抱えた際には、ぜひ専門家である弁護士に相談してください。

当事務所でも、法律相談を受け付けております。紹介などは不要ですから、お気軽にご相談ください。

執筆者

弁護士 河野 佑宜のアバター 弁護士 河野 佑宜 こうの法律事務所 代表弁護士

2007年に弁護士登録し、2015年に「こうの法律事務所」を開設。
民事・刑事問わず幅広く取り扱う弁護士として活動。
2021年度 京都弁護士会 副会長を務めたほか、京都弁護士会の複数の委員会で委員長・副委員長を務める。

Contents